自然言語処理に特化したAI技術を強みにライフサイエンス領域で飛躍【週刊ダイヤモンドMI連動】
「記録に埋もれたリスクとチャンスを見逃さない」をミッションに、自然言語処理に特化したデータ解析事業を推進。不正の証拠を見出すリーガルテック領域を起点に、人間固有の経験や勘といった暗黙知を再現する「KIBIT」などの独自AI技術の開発を通じて、金融・官公庁・製造業・医療機関向けなどに実績を広げる。現在の導入実績は約240社。
近年はライフサイエンス領域に注力。医療とAIそれぞれに精通した人材力を武器に、診断支援・創薬支援・転倒転落予測など、多様なAIソリューションを提供する。また認知症診断支援では、「言語系AIを活用した世界初の医療機器」としての早期承認取得を目指す。今後も診断支援や疾患予測など幅広い領域への広がりが期待されている。
(週刊ダイヤモンド2021/1/25号 P.72「マンスリーインフォメーション」転載)
FRONTEOの強さをキーワードで読み解く ~取材こぼれ話~
「お客さまの困りごとを解決したい」が事業の原点
私たちの会社の創業は2003年。国際訴訟で必要な、証拠となる電子データの保全と調査・分析を行う「eディスカバリ(電子証拠開示)」や、「デジタルフォレンジック調査」というリーガルテック事業を起点に事業を展開してきました。
創業当時は、グローバル社会の進展とともに積極的に海外進出を図る企業が増え、国際的な紛争に巻き込まれることも増えてきたタイミングでした。そういった企業に対して「データ解析技術の未熟さにより、訴訟に必要な情報が見つからず窮地に立たされる企業を守りたい」という使命感をもとに当社はスタートしています。
独自の自然言語処理の技術を強みに、今ではAI企業として評価いただくことが多い当社ですが、「技術やソリューションを売る企業」ではなく、あくまでも「お客さまの困りごとを解決する企業」としての初心が、今の経営や事業のすべてに通じる底流になっています。
人間の暗黙知を物理的に置き換え再現
AIにもさまざまな切り口がありますが、私たちは「自然言語処理」すなわち「テキストの解読を通じて、(リスクや不正あるいは対象となるテーマなどの)ターゲットを探していく」ことに重きを置いています。
例えば不正の発見においては、弁護士や犯罪捜査官などと言った専門家が、独自の見識や経験、あるいは勘などに基づいて検証・抽出していくのが従来の方法です。私たちはそのノウハウや暗黙知を重視し、これらを物理的・数学的に再現していった。その技術力(人工知能「KIBIT」など)が、私たちの最大の特長です。
自然言語処理の技術は、応用の幅が非常に広くあります。例えば金融。コンプライアンス対策などにおける、お客さまとのやり取りのなかの「説明がしっかりされているか」「理解されているか」「購入動機に齟齬がないか」などの問題点の抽出。医療領域では、創薬ターゲットの発見のための、論文の検証などもあります。疾患の原因となる遺伝子やその変化など、関連する無数の論文から、関連する情報を探し紐づけていく。AIならではの強みです。
直近では、学研ホールディングス様との業務資本提携を行い、教育や介護の領域への取り組みも始めました。データの解析は、不正の抽出のためだけではありません。そこから生まれる新たな可能性もたくさんあります。「記録に埋もれたリスクとチャンスを見逃さない」。私たちはこのミッションのもと、さまざまなお客さまの課題に応えるお手伝いをしています。
言語系AIを活用した世界初の医療機器メーカーへ
私たちが近年もっとも注力しているのが、ライフサイエンスAI領域です。なかでも「認知症診断支援システム」と「転倒転落予測システム」が現在の柱になります。例えば「認知症診断支援システム」は、数分の簡単な自然会話のなかから、認知症となる要素を抽出するというもの。これまでの認知症の受診率は4割ほどでしかなく、専門医がいない病院でも遠隔でも対応できることから、受診率の大幅な改善が期待され、認知症の早期治療が可能になります。また「転倒転落予測システム」は、「看護記録をつぶさに調べていくと、転倒転落の予兆が見えてくる」という事実を、AIを用いて仕組化したものです。
そして「認知症診断支援システム」は、「言語系AIを活用した世界初の医療機器」として、2023年の認可取得を目指しています。先行して2020年11月に医療機器製造販売業許可申請書を東京都に提出。今年1月18日に、第一種医療機器製造販売業が許可されました。
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AIとドメイン双方に精通した人材を備える
医療系のAIの開発が難しいのは、AIと医療(専門ドメイン)の双方の造詣が非常に高いレベルで求められることにあります。私たちは積極的な人材投資により、その両立が可能な組織づくりを進めてきました。
例えば、自らの創薬研究をAIとして置き換えることができる数学者など、さまざまなエキスパートが社内にいます。そういった人材力や、自然言語処理の実績の数々、そして「お客さまの困りごとを解決したい」という企業の根幹となる文化の相乗で、今までにない新たな可能性を持ったAI企業として、さらなる成長を続けたいと考えています。
会社概要
株式会社FRONTEO 代表取締役社長 守本 正宏 氏
資 本 金: 25億6,865万円
設 立: 2003年8月
従業員数: 335名(連結)
売上高 :104億7,069万円(2020/3月期連結)
東証マザーズ(2158)