お客さまの生活と街の未来をサポートする地域共創型自動車ディーラー【週刊ダイヤモンドMI連動】
兵庫県東部を基盤とし20の店舗を展開するトヨタ系自動車ディーラー。毎年のように販売店表彰を受けるなど全国でもトップクラスの実績を持つ。
経営の大きな特徴は、車だけでなくライフスタイルすべての相談が寄せられるような、〝家族のようなコミュニティ〞の構築を重要なテーマに置くこと。さらに自治体や企業、金融機関など幅広く連携を進め、例えば猪名川町や加古川市の乗り合い送迎サービス「チョイソコ」の運営など、「数十年後まで見据えた街づくり」を積極的にサポートする。また株式会社タミヤとアライアンスを組みオリジナルのミニ四駆を開発するなど、物販・EC事業も多彩だ。
これらの取り組みは、会社のブランド力や社内の人財力向上に直結。営業実績にも反映されているほか、就職先としての人気も大幅に伸長している。
(週刊ダイヤモンド2021/9/21号P.68「マンスリーインフォメーション」より転載)
ネッツトヨタ神戸株式会社の強さの秘訣 ~取材こぼれ話~
地域のためになることであったら、見返りなど考えなくていい
私たちの店舗が、その街に30年50年と存在し続けることができるか、地域のお客さまに必要とされ続けることができるか。クルマを売るという目先の話だけではなく、もっと長いサイクルで会社の価値をどう高め、どう永続させていくか。ネッツトヨタ神戸の経営の指標は全てここが出発点になっています。
例えばお客さまとの関係性。クルマに関することだけでなく、クルマ以外の相談もされるようになりなさいと。「うちの子供に習い事をさせたい」「スポーツをやりたいと言っている」そういった相談にも親身に対応しています。また各拠点では、将来を担うお子様が少しでも車に興味を持ってもらえるようキッズエンジニアやお客様参加型のレース活動はもちろん、定期的に子供向けの体験教室やスポーツイベント、ドライビングイベントなどを実施し、いろんな経験ができ楽しんでいただける場所を積極的に提供しています。
また企業との関係性では、それぞれの強みを共有し、新しいサービスにつなげたり、双方に送客しあったり、SDGsの企画を始めたり、より良い相乗を生める関係を創り出しています。なかでも株式会社タミヤ様と共同で開発したオリジナルのミニ四駆はとても好評ですし、三井のリパーク様とはカーシェア事業も展開しています。
自治体においても同様で、民間として行政の何を補うことができるかどうか、地域のお困りごとで解決できることはないかを絶えず考えています。
その代表例として、猪名川町や加古川市の乗り合い送迎サービス「チョイソコ」の運営があります。また今回のコロナ禍では、各自治体や小学校や幼稚園・保育園にマスクや次亜塩素酸水の無償配布を行いました。近年は特に防災のニーズが高いため、地域防災協定の拡充など、より広範な協力関係を深めています。
これらの取り組みは、すぐに業績に反映されるわけではありません。しかし私はそれでいいと思っています。地域のためになることであったら、見返りなど考えなくていい。社内にもそう周知しています。
それでもやはり2年3年と続けていくと、その姿勢に共感していただける方が増え、少しずつクルマの売上にもつながっていきます。さらに、業界の枠を超えた人的つながりや情報のネットワークが広がることで、個々の社員の話題の引き出しや、対応できることの幅が増え、人としての魅力を上げていく。お客さまからの信頼度を高めていく。そういった積み重ねが業績にも反映され、着実に強い会社になってきていることを感じています。
お客さまとのタッチポイントを増やし、関係を強固にしていく
もっとも私が入社した当時は、ネッツトヨタの全国のディーラーの中でも最下位グループの評価の会社でした。しかしそれは、決して過去の経営陣のせいなどではなく、(ネッツの前身のオート店は)兵庫県でもかなり後発のブランドであったため、なかなか良い固定客を持てなかったことに要因があります。
そういう環境下でしたから、クルマを売って売りっぱなしにするのではなく、今のお客さま一人ひとりにしっかり向き合い、丁寧に接することを徹底していきました。その入り口として、ディーラーとしては例のなかった洗車機を全店舗に導入したり、保険やメンテナンスを強化したりするなど、お客さまとのタッチポイントを増やすことに注力しました。
特にポイントになったのが、2004年のNV(ネッツ店とビスタ店)統合です。当時は私たちの会社のほうが力が弱かったため、このままでは飲み込まれてしまうと強い危機感を覚え、サービス体制の充実をより強く進めていきました。
その成果は着実にカタチになっていき、2007年に初の「ネッツオブザイヤー」を受賞以来、10年連続でトヨタディーラーとしての表彰を受け、2017年に特別表彰を頂くなど、私たちの企業力は大きく向上していったのです。
トヨタの全車種併売のスタートは、大きな危機であり大きなチャンス
2020年5月、トヨタは販売店の全店全車種併売を全国規模でスタートさせました。これは当社の経営において、新たなターニングポイントになるでしょう。しかしこの流れはある程度予測されていたことと、NV統合以降の取り組みが実を結んできていることから、危機でありつつも、大きなチャンスだと捉えています。
今までは、取扱い車種が限られていたことで、例えば家族の中でも違うディーラーから車を買っていた例は少なくないはずです。しかし併売になると、購入する先はどこか1カ所に絞られる。1がゼロになるか2になるか、その差はあまりにも大きい。だからこそ、どこまで家族ぐるみでお付き合いできてきたか、信頼を勝ち得てきたか、その積み重ねが問われてくると思うのです。
もちろん私たちの実力はまだまだ発展途上ではありますが、絶えず5年先10年先さらに先を見据えて取り組んできたことは、ある時大きな花を咲かせ、強固な競争力を創り出すはず。幸いこれまでの取り組みに関心を持っていただき、当社に入社したいと考えてくれる意欲的な方も増えていることから、そういった人財力をさらに高め相乗させることで、より魅力的で永続性の高い企業へと進化していけるものと、その手ごたえを強く感じています。
会社概要
ネッツトヨタ神戸株式会社
代表取締役社長 四宮 康次郎 氏
設 立: 1966年10月
資本金: 3,000万円
社員数: 330名
年 商:195億円(2021年3月期)