ウエディングフォトの先駆けとなる「ラヴィ・ファクトリー」、小さくても心のこもった式をあげたいという要望に応え7万7000円から挙式可能な「小さな結婚式」、ブライダルヘア＆メイクを手掛ける「ブライダル美容」の3事業を中核に、温浴・グランピング施設や古民家ホテルの運営など、国内外を合わせて10事業を手掛ける株式会社レック。

同社の事業の特徴は「Value」「Pioneer」「Trend」の3つのポリシーを軸に、消費者の潜在ニーズを上手にくみ取ったり、あるいは既存のサービスへの不満を解消したりするなど、今までにない着眼点での新しい業態づくりを得意とすることだ。

そのためにも創業以来「現場の声を聞く力」を重視しており、その一環で2018年から始まったのが、社内からの新規事業提案・改善提案などを募る「KSGコンテスト」だ。

「時代の変化のスピードがものすごく速いこと。Z世代の時代になって、私たちの今までの経験が通用しなくなってきたこと。ウエディング業界は大きな変化の波にさらされていること。それは『ラヴィ・ファクトリー』や『小さな結婚式』も同じであり、お客さまとの距離が近いスタッフの意見をしっかり聞いていくことが何よりも大切だと考えたのです」と、同社の梅原栄次社長はその背景を語る。

コンテストは、社員・パートなどスタッフすべてが対象で、総勢1,000名ほど。業務改善部門、新商品部門、新規事業部門という3つの部門に分けられる。

仕事をしている中で「こんな無駄なことをしていますよ」「こうしたらもっと喜ばれますよ」「こうしたらもっと効率が良くなりますよ」といった日々の思いをそのまま投稿するもので、毎年400件ほどのアイディアが上がってくるという。業務改善部門が全体の8割ほどになるといい、その等身大で身近なところが、コンテストが活性化している一因だろう。

そんな手軽さが身上のコンテストながら、賞金は大判振る舞い。1万円から最大500万(新事業提案で実績連動型)まで用意され、毎回500～600万円が提供されるという。

ポイントは、「意見を出してくれてありがとう」「その意見を買い取ります」という考え方が根幹にあること。賞金を出して終わりではなく、「実際に改善するためにあなたリーダーにします。メンバーに入ってくださいなどと、具体的に実行していくまでがワンセット」になる。

実施した効果は初年度からすぐに表れた。提案された新商品が大きなヒットとなり、発案者は200万の賞金を獲得。翌年はまだ入社して数か月の社員のアイディアが採用されて20万円を獲得。「泣いて喜んでいた」という。

「コンテストを実施することによって、現場のモチベーションが上がる。結果として、問題意識を持って仕事をするようになる。この効果は非常に大きいと考えています」

▲リモートでのプレゼン会の様子

さらにこんな効果も生まれた。「スタッフが1000人を超えると、なかなか顔と名前が一致しなくなります。ましてやそれぞれの人がどんな感性を持っていて、日々どんなことを考えているかを感じ取れる機会はめったにありません。その点でこのコンテストは、『凄くロジカルな考え方をするな』『チャレンジ精神旺盛だな』など、スタッフ一人ひとりの個性を経営陣がよく理解する場としても非常に役に立っています」

そしてこれらの可視化が、実際の人事にも反映されている。例えば、同社の人事部長はもともと長野在住の「ラヴィ・ファクトリー」のカメラマン。「あまりにも業務改善のプレゼンが素晴らしくて」、それがきっかけで現在、人事部長にまで抜擢されたそうだ。

企業概要

本社所在：兵庫県神戸市中央区東川崎町１丁目3-3 神戸ハーバーランドセンタービル18Ｆ
会社設立：1989年9月21日
資 本 金：5,000万円（グループ計5億円）
社 員 数：618名
年　  商：104億円（グループ計131億円）2024年5月期
役　  員：取締役社長　梅原 栄次
http://www.lec-net.com/