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「倉吉から世界へ」を合言葉に、”愛される質”を追求するハンドバッグメーカー【週刊ダイヤモンドMI連動】

株式会社バルコス
2021/05/20

「倉吉から世界へ」を合言葉に、”オーセンティックで機能的な”そして目に映る品質を超えた先にある”愛される質”を追求し続けるハンドバッグメーカー。OEM、ODMで培われてきた企画・開発力と、大量生産可能な定番の品を育てることによって、高いコスト競争力を構築。同社の看板商品である”緑の長財布”シリーズは、累計30万個以上の販売実績を誇る。

BtoBからtoCへの転換時は、直営店舗を中心に事業を拡大してきたが、2019年頃から通販事業を強化。現在はテレビの通販番組、新聞・雑誌広告との連動、ECなどによる販売が中心になったことで、コロナ禍においても堅調な業績を維持している。今後は、鳥取を起点とした「ものづくり×食×観光」の相乗による地方創生事業にも力を入れていく。

(週刊ダイヤモンド2021/5/29号P.68「マンスリーインフォメーション」より転載)

 

バルコスの強さをキーワードで読み解く ~取材こぼれ話~               

東京でカメラマンを経て、故郷の倉吉で起業

高校のころからクリエイティブな仕事を目指していて、大学卒業後は東京で雑誌のカメラマンをしていました。幸い若くしてかなり成果が出せるようになったのですが、少しずつ違和感を持つようになったのです。クリエイティブな仕事のようで、実は編集者の意向に合わせないといけない部分が大きく、請負のような仕事だなと。

そして、起業のほうが自分の志向にあっているのではないかと考え、母親が地元で女性向けの雑貨のお店を経営していたのを見ていて、バッグの業界に目を付けました。アパレルやコスメなど他の産業に比べて、バッグの業界におけるガリバーは日本にはほとんどない。ここなら独自の付加価値をつけることで勝負になるかもしれない、そう思ったのです。

最初はワニ皮などの爬虫類のバッグの取り扱いから始めました。実家の店先で販売していたのですが、実績も知名度も無いから売れない。そこで「これは他人の信用を借りたほうがいい」と、いろんなお店に置いてもらったり、催事に取り組んだりしたのですが、なかなか売れません。それでも懲りずにいろんな挑戦を繰り返していくうちに、少しずつ売り方のコツのようなものが分かってきました。

一つの転機になったのが、ドイツの「PICARD(ピカード)」というブランドと日本総代理店契約を締結したことです。を取得したことです。それによって今まで入れなかった百貨店などとの取引ができるようになりました。ただ「ピカード」のオリジナルそのままでは、日本のライフスタイルに合わないこともあって、先方の中国の工場を使わせてもらって、日本向けのカスタマイズを手掛けるようになり、ここで世界品質のモノづくりのあり方を叩きこまれたことは、その後の大きな財産となりました。

その後、自社ブランドで勝負すべく展示会などにも積極的に出展し、そこで当社の仕上がりの良さに目をつけていただく企業が増えて、OEMの仕事が増えていったのです。この頃の経験の積み重ねで、コスト競争力が高いモノづくりの技術が蓄えられていきました。

一方で海外向けには「ハナアフ」というブランドを立ち上げ、“日本らしさのある商品開発”を進めました。ただここで重視したのは、”日本人が好きな”という意味での日本らしさではなく、外国の方が好きな日本らしさという発想です。例えば、アニメや漫画、ハイテク、異文化といったイメージのような。

その一つとして着目したのが折り紙で、これが「ハナアフ」人気の牽引役となりました。「折りたためるバッグでありながら、どのたたみ方でも美しい形と機能性を併せ持つ」、そんなデザイン性とオリジナリティの高さが評判を集め、海外の売り上げが伸びていったのです。

 

店舗販売から通販を主力に移行したことでコロナ禍でも増収増益を確保

国内では長くOEM主体のビジネスをしていたのですが、「事業を安定させていくには、自分で動線を作っていかないといけない」と感じたことと、海外の事業の好調もあり、倉吉の本社に併設したショールームを起点に直営店舗展開を開始し、主に路面店やファッションビル内を中心に、積極的に全国に広げていきました。

その一方で、2019年頃から通販部門への注力も始めました。「新聞や雑誌に広告を出して、コールセンターで注文を受ける」といった販売スタイルを基本に、さまざまなメディアに出稿して、自分たちの売れる形を作っていきました。さらにテレビショッピングも自社インフォマーシャルなどを中心に、積極的に打って出ています。

その後すぐに訪れたのが今回のコロナ禍です。リアル店舗はインバウンド期待含みの出店も多かったため、売上は一気に減少しました。しかしこの時期に、「店舗の売上は後回しにしていいから、すべての資源を通販に集中しろと」、それくらい特化して業容の転換を進めたことで、幸いなことに2020年12月期は大幅な増収・増益で終えることができました。現在は通販事業が売り上げの9割ほどまでになっています、

私たちの顧客層は、50~70代の女性が多数を占めます。ただそれは「より良いものをより手ごろに」オーセンティックと価格競争力を極めていった結果であって、特に「シニア向け」「女性向け」と謳っているわけではありません。シンプルで飽きの来ない、ユニセックスな商品が定番となっています。

この定番づくりがうまくいったのも、私たちの強さになっています。例えば当社の看板商品である「緑の長財布」が、すでに30万個以上販売されているように、「定番の品をしっかり作って、大量生産できる環境を整えること」が、価格競争力の向上につながっています。

しかし私たちは機能や価格ばかりを追いかけているわけではありません。手にするたびにときめきを覚え、その喜びがいつまでも長くつながっていくものであること。そういった
「目に映る品質を超えた先にある”愛される質”」を追求し続けてきたことが、私たちの本質的な価値につながってきているのだと考えています。

 

食と観光とローテクは、これからの時代の地方の価値

例えばイタリアのフィレンチェ。人口だけで見ると鳥取県より少ないですが、ルネサンス時代の数多くの建築物が受け継がれ、グッチ、フェラガモなどの世界的な著名ブランドが本社を構え、観光客が非常に多い場所です。こういう街のあり方を、私たちも参考にし、実現していきたいというのが、今後のビジョンの一つです。

地域創生と言えば、食と観光が大きな軸になりますが、もう一つ、その町に受け継がれてきた”ローテク”すなわちモノづくりの文化も大きなキーワードになります。地場の工場を軸とした産業観光などもその代表的な例でしょう。そこで私たちも、バルコスの今のモノづくり事業を核に、鳥取/倉吉を舞台にした地方創生の新たなカタチを作っていきたいと考えています。

まずその入り口として、倉吉の本社内に「Barcos Coffee/バルコスコーヒー」を2020年12月にオープンさせました。また年始には、ファッションニュース通信社を設立し、ファッション配信系のメディア「ファッション トレンド ニュース」の運営も始めています。

いずれもまだ緒についたばかりですが、こういった取り組みの一つひとつが相乗し、地域に貢献し街とともに歩む、より広範な事業を生み出していきたいと考えています。

 

会社概要

株式会社バルコス 代表取締役 山本 敬 氏

資本金: 3000万円
設 立: 1991年5月
従業員数: 63名 

売上高 :43億9600万円(2020年12月期)
TOKYO PRO Market

https://www.barcos.jp/

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