会員企業様情報

【工場訪問】フカヒレ生産・販売の実績は国内随一。中華・高橋のフカヒレ&サメの身の加工場を見学しサメづくしグルメ

株式会社中華・高橋
2023/06/20

中華に特化した専門総合会社として3代70年の歴史を持ち、取り引き先は首都圏1都3県に2,000 社以上。特にフカヒレ生産・販売の実績は国内随一の実績を誇る株式会社中華・高橋

フカヒレやサメの身などのサメ関連商品の加工は、(サメの水揚げが全国の半数近くを占める)気仙沼で行っており、今回はその二つの工場と干し場をご案内いただきました。

まず向かったのは本吉工場、通称「ふかふか村」。テーマパークのようなリゾート地のような、可愛らしくお洒落なスペイン風の施設です。

きれいに刈り込まれた沿道の樹木は、とても”松”とは思えないほど愛らしく微笑ましい。

その先をもう少し進むと現れるのが、メインとなる事務所兼工場棟です。

建物のすぐ目の前には三陸の広大な海が広がり、この景色に惚れ込んだ先代が、この地に工場建設を決めたそう。

同時にゲストハウス的な機能も持たせており

打ち合わせ室を兼ねた社員食堂は、設えも展望もリゾートレストランのレベル。おもてなしの心と社員を大切にする姿勢、同社の受け継がれてきた企業文化がこのあたりにも顕著に感じることができます。

一見、海面とはかなりの高低差があるように見えるこの施設も、実は東日本大震災の津波が押し寄せ、大きな被害を受けました。

エントランスを飾るタイルの壁面も全て壊れたため、もう一度スペインからタイルを取り寄せてかつての美しい姿を再現したそうです。

こちらの工場は、”フカヒレ”の加工が専門。ご案内の前に、まずはフカヒレの構造の解説から。

こちらは尾びれ(ヨシキリザメ)。L字型の長辺部分は骨が入っているため、下に伸びる短い辺をカットし加工していきます。

こちらは胸びれ。乾燥させるほどに、フカヒレらしい曲線が生まれていくさまが分かります。

加工の手法は大きく二種類。生の時点で皮の部分を剥いで、そこから干すものと、皮が付いたまま天日で干すもの。お客さんの用途に合わせて使い分けているそうです。こちらの写真は、皮を剥いでから乾燥させているもの。

商品化する際は、まず真水で戻し(吸水)、加熱・吸水を繰り返します。

素人目には「結局戻すのなら、生のまま加工できないの?」と思ってしまいそうですが、一度しっかり乾燥させることで繊維質の結びつきが強固になり、加工・調理しても崩れにくいフカヒレができるとのこと。他にも魚の臭みを取る効果などもあるそうです。

こうして戻されたフカヒレがこちら。これだけあるといったい金額は幾らになるのでしょうか?まさに海の宝石箱です。だからこそ、グラム単位できめ細かく管理・出荷されています。

一方こちらは、繊維質(金糸)の部分をほぐした「散翅(サンツー)」と呼ばれるもの。

「排翅(パイツー:ヒレの形が保たれたフカヒレ)」より手軽な価格でありながら、金糸の味わいや食感もしっかり楽しめるためニーズが高く、スープやあんかけなどに用いられます。

この工場での一日の生産量は、排翅・散翅ともに1日あたり200~300kg。合計すると500kgほどにもなるといい、第一人者としての実力のほどがうかがえます。

これら同社のフカヒレ製品の多くは、中華料理店向けに卸されるものですが(最近は和食店からの引き合いも増えているとのこと)、姿煮・ふかひれスープ・ふかひれラーメンなど、同社の自社ブランド製品もいくつか用意され、道の駅や物産店などで販売されています。

デザイン的にも非常に上品で高級感があって、お土産品として持って行ったら喜ばれそう。ということで、全種たくさん買い込んできました。

その日の夕方、フカヒレメニューを味わうべく伺ったのが、気仙沼漁港の海向かいにある人気寿司店「鮨智」

7,480円の気仙沼ふかひれ丼は他のメニューより抜きんでて高いですが、大きなフカヒレが丸々入ったこのボリュームを考えると、実際にはかなりお値打ち。フカヒレの旨さの神髄を味わえます。かかっている餡は、フカヒレの味とのコントラストを立たせるべく、とろみ強めの少し濃いめの味付けにしているそうです。

 

-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-

先ほど「加工の手法は大きく二種類」とご紹介しましたが、本吉工場とは対照的に、皮が付いたまま天日干しにするための作業場が次の目的地となります。先ほどとは違って、少し山間に入ったところ。山から海に駆け下りてくる風が、天日干しの工程に向いているそうです。

まずはこちらの平らな場所でしっかり水気を切って、一つずつ吊るしていきます。

11月から3月の冬季シーズンのみの作業のため、この日はフカヒレの姿はありませんでしたが、冬の風物詩としてメディアでもよく紹介されるとのこと。【参考動画はこちら】

こうして干されたフカヒレは、箱詰めして保管され

出荷に合わせて最後の仕上げ乾燥をして、お客さまのもとに届けられます。天日干しのフカヒレの味は、また一味違うようです。

ただし、ここからフカヒレを戻して調理するにはかなりの経験と技術がいるため、同社では天日にこだわり仕込みから自分で手掛ける調理人向けと、下準備を代わりに行い半加工品として提供する(調理人は餡などの味付けの個性にこだわる)ものと、双方のニーズに合わせた商品を提供しています。

ちなみにこちらは、一個100万円を超える大型高級フカヒレ。一般流通はしていませんが、特別なイベントなどで用いるときのために、このような特別なフカヒレも保有しています。

もう一点ユニークなのが、こちらのサメのはく製。一般的に顔の部分は捨てられてしまうため、それらを回収して作ったもの。同社では各拠点にさまざまな剥製が陳列されており、サメの存在をより身近にしてもらうための発信にも注力しています。

 

-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-

工場訪問3カ所目は、気仙沼工場。高価なフカヒレに対して、サメの”身”の価格は非常に安く、同社はその価値をどう上げていくかに力を入れていますが、その挑戦の舞台となる工場です。

その前に、同社がサメを仕入れている気仙沼市魚市場を見学します。こちらは水揚げ額で全国6位(2021年実績)で、国内トップのカツオ、サメ、メカジキを始め、多様な魚が水揚げされる日本を代表する漁港の一つです。

気仙沼の観光拠点の中核でもあり、飲食・物販店が並ぶ「気仙沼海の市」や、日本で唯一のサメを専門とする博物館「気仙沼シャークミュージアム」が隣接するほか

何よりも国内最大級の長さを持つ354メートルの見学デッキから、一般の人でも水揚げやセリの様子を間近に見ることができることが魅力です。(※水揚げ量が多く、遮るガラスもないことから、日本で最も市場を体感できる施設だと思います)

上の写真はビンチョウマグロ。カツオ船が本格的に稼働し始めたことから、市場も街そのものにもかなり活気が出てきています。

施設内には、どんな船がどんな魚をどれだけ獲って戻ってきたか、デジタル掲示板で表示されます。(※魚市場のホームページでも、翌日の入船情報が公開されています)。ちなみに「とんぼ」とはビンチョウマグロのこと、バチマグロは「だるま」と言われます。

見学デッキとは別に、一階から入札場を見通せる場所もあります。(ただしここはガラス越しです)

そしてこれが、この日に中華・高橋が落札したヨシキリザメの一部です。サメは大きな箱(バルク)単位で競りが行われます。こちらは身肉も使うことを前提としたもので、この場合は沿岸・近海で短期間の漁で水揚げされたものを購入します。背の部分が青みがかっているのが鮮度の良い証拠。

一方、遠洋など中長期にわたっての漁で獲れたサメの身は主にすり身の材料で使われるため、同社はそれらの会社からヒレの部分だけを購入する形で提携しているそうです。

これら落札したサメの加工が行われるのが、2017年に完成した気仙沼工場。「Shark R&D Center」と名付けているように商品開発を中心とした研究施設としての役割を担い、周りの工場建物のなかでも一段と目を引く、デザイン性高い建物となっています。

中に入ると「ピーチシャーク®」をアピールする掲示物がずらり。商標登録済みのこちらの商品が、フカヒレだけに依存しない同社の新たな未来を担います。

工場に運ばれたたくさんのヨシキリザメのなかから、実際に1匹捌いているところを見せていただきました。

頭と内臓の部分は、すでに漁獲後に船上で処理をされており

ヒレを取るところからスタート。まずは背ビレ

そして胸ビレ、尾ビレが切り落とされて行きます。

これらのヒレは、(天日干しシーズン以外は)表面の皮を取り去ったあと、前述の本吉工場に送られフカヒレとしての加工が施されます。

捌いた直後の断面が、とても色鮮やかで艶やかで美しい。

次は身の部分を三枚におろします。パッと見てわかるでしょうか、サメの身の大きな特徴の一つが、背骨から小骨が出ていないこと。

そのため3枚におろすと言っても、普通の魚とは違い背骨の部分を切り出す作業になります。

さらに皮の部分を剥いで (通常これらの作業は機械で行います)

裏がえしたのがこちら。このまま刺身にしたら、イサキか鯛かと思ってしまいそうな色合いですね。

身の断面がこちら。うっすらとピンクがかったこの色から、「ピーチシャーク®」というブランド名が生まれました。

パッと見、メカジキのトロのようにも見えますが、残念ながらメカジキとサメの身とでは市場価格が段違い。だからこそ、すり身でしか活用されてこなかったヨシキリザメの肉を、「切り身」そして「刺身」へと価値を高めることで、漁業者や加工業者の収入を増やし、事業の持続可能性を高めていく。それこそ今同社が、全力を挙げて追求しているテーマです。

ちなみに、ヒレでも身でもない可食外の部分も、皮は革製品の材料になったり、骨はコンドロイチンを多く含むためペットフードになったりと、さまざまな場所に転用されています。

ピーチシャークの特徴は、高たんぱく、低カロリー、低脂質でヘルシーな食材であること。小骨がないので子供から高齢者まで安心して食べることができることなど。そのため、病院や老人ホームなどの食事で重宝されていますが、「もっと広く、サメの身の部分の美味しさや魅力を伝えたい」と取り組む飲食店も増えています。

そこで工場見学の後に、そういった取り組みをしているお店の一つ「鮨処 えんどう」にお伺いしてきました。

ここではフカヒレ以外に、サメの身の部分のメニューも3種類が用意されています。残念ながら広東風蒸しは要予約のために無かったのですが(お店の方的にはこちらがイチ押しとのこと)、甘酢葱ソースとサメカツの2品をいただいてきました。

こちらが甘酢葱ソース。カラッとした衣とサメの身のしっとりした食感の対比を、甘酢葱ソースが包みこんで一体感を出している感じ。ビールと合いそうです(この日は車の運転のため、試せませんでしたが)

こちらはサメカツ。奥の一列はサメの身だけで揚げたもので、手前側は梅と大葉を挟みこんだもの。サメの身があっさりしているため、こういう味変は大きいかな。ただまだ注文する人は限られるようで、お店の息子さんが、いろんなメニューにチャレンジしているとのこと。

そもそも気仙沼は美味しい魚介類が多すぎるため、その中から選ばれるためにしないといけないことはまだまだ多いかもしれません。しかし淡白だからこそ、油やソースを加えたり下味をつけたりと、足し算・掛け算で生まれる可能性は無限にありそうです。

こういった皆さんの努力や挑戦によって、ブランド力が高まり新たな食文化が育っていくことを、期待して待っていたいと思います。

 

(取材・文 ダイヤモンド経営者倶楽部 北村和郎)

 

pagetop