<インタビュー>“目利きのできる運送会社”が始めたフルーツ通販。お客さまの満足のために大切にしていること【前編】
2003年の創業以来、市場との信頼を積み重ね、青果の取り扱いを軸に事業を広げてきたドリーム・ケイ(Dream KEI)。こだわってきたのは「サービス業としての運送会社」。そのキーワードとなるのが、顧客からのニーズを先取りする目利き力と提案力だ。
そんな強みを生かして2022年6月から着手したのが、フルーツの通販事業。運送会社がなぜ通販なのか、ドリーム・ケイだからこそ提供できる魅力は何か。社長の武藤里佳さんに話を伺った。
■運送会社のイメージを変えたい。青果の取り扱いならそれができると思った
「ただ運ぶだけではない。自分らしさを発揮できて、お客さまにも喜んでもらえる、今までにない運送会社をつくりたい」。そんな思いで2003年にドリーム・ケイを立ち上げた武藤さん。その夢を実現するために選んだテーマが青果だった。
「衣食住の中でも、食は特に重要なもの。絶対なくならないし、毎日安定した取引量があります。一方で季節や産地や値段など、条件が日々変わるからこそ、提案の内容次第で自分たちの個性を創り出していけるはず。そう考えたのです」
武藤さんは創業時、「目指せ日通!」を目標に掲げていたという。「何を無茶なことをと呆れられるかもしれませんが(笑)、単に規模的な目標というのではなく企業のイメージ的なもの。言葉では少しわかりにくいのですが、運送会社という枠組みの中の会社にしたくなかったんです。危険・きつい・汚いの3Kイメージや、A地点からB地点に運ぶだけの単純作業ではなく、『一般的な企業がトラックを持っていて、運送もしている』、そんな会社にしたいなと」
だからこそ採用においては、運送業界以外の人を中心に置いているそうだ。「大切にしたいのは、ホスピタリティの精神。きめ細かな心遣いや作業が当たり前にできる、そういう感性を共有できる人を採用し、私たちらしい企業文化を育てていきたいのです」
■目利きが強みとなるのも、運送会社としての「安全・安心」を担保しているから
一般にはあまり馴染みがない名前だが、市場に出入りし、仲卸から食材を仕入れ、飲食店などに届ける「おさめや」という仕事がある。目利きをして買い付け、納品するという仕事の流れだけ見ると、ドリーム・ケイの業務のイメージに近いが、実際の立ち位置はどう違うのだろうか。
「私たちは、目利きを強みにはしているものの、あくまでも運送会社であることが基本です。専用のトラックを持ち、運転手を雇用し、運行管理の仕組みも整備している。安心・安全をしっかり確保している。その基盤の上に、『青果に強い』『目利きができる』という個性が乗っているのです」
これまでの主な得意先は、ホテルや飲食店。なかでも付加価値にこだわる高級店からの支持を受けてきた。大切にしてきた「安全・安心、清潔、高いホスピタリティ」が認められ、さらに強みとなる”目利き力”が、その評価をさらに高いものにしてきたのだ。
「初めのころはひたすら勉強に明け暮れました。市場を訪れ、仲卸の方々に積極的に教えを受け、自ら買って食べたり、手触りや色や香りを比べたり。もちろん産地や旬の勉強などもして、『運送会社ってここまでするの?』って言われるくらいの知識や経験をつけていきました」
現在も、毎日市場に出ることは欠かしていないという。大田(市場)や豊洲や、その時々の良いものを探して丁寧に仲卸を回る。そんな積み重ねがあるからこそ、同社だからこそ手に入れられる掘り出し物が出てくるのだという。
「市場で販売されている相場、小売りの現場での価格、どちらにも精通していることが目利きの出発点だと思っています。市場で同じ価格で売られているものでも、小売店で販売されるときには、大きな値段の乖離があったりします。その差が分かるかどうか、これがいくらで売れるか予想がつくかどうか。お得な品を手に入れるということは、『(馴染みなんだから)もっと安くして』と仲卸に頼み込むことではありません」
そういった”目利き力”が少しずつ評判になり、「おまかせ」の注文が増えてきたという。「少し余裕があるスケジュールで、品ぞろえを任せていただけたら、『今日はこれが圧倒的にお得』という商品をピンポイントで組み合わせることができます。それによって予算に余裕が生まれ、少しこれもおまけして付けておこうかなとなる。儲けることよりも、お客さまに喜んでもらえることのほうが嬉しい会社ですから(笑)。その結果、口コミ伝いでお客さまが増えていきました」